記者指針

記者指針(平成13年6月1日)

「ベストワンの新聞」をめざす産経新聞の記者は報道や論評の質の高さだけでなく、その行動でもまた高い信頼性と品性が求められる。そのことに思いを致し、ここに「記者指針」を定めた。「産経信条」と合わせて、産経新聞記者は常に心に刻み込んでおかなければならない。

[自由と責任]

産経新聞記者は表現の自由を享受するにあたり、重い責任と公共の利益を自覚しつつ、以下の諸点に留意しなければならない。

1)情報収集にあたっては自身の身元を偽ったり、取材目的を曖昧にしたり、あるいは不正な手段を行使してはならない。あくまで正常な方法によってのみ情報収集や取材、報道は正当化される。

2)暴力的ないし精神的な圧力を取材先や情報入手先にかけてはならない。逆に外部勢力からの不当な圧力に屈してはならず、ましてや金銭的利益を伴う誘惑に応じてはならない。

3)自己や特定の個人、団体の不当な利益のために産経新聞記者の立場を利用してはならない。とくに私的利益を目的として情報を流し、それをもとに利得を図ることなどは厳に戒めるべきである。

[正確と公正]

報道は正確かつ公正でなければならず、論評は世におもねらず所信を貫くべきであるという新聞倫理綱領の精神を生かすには以下の諸点を守らなければならない。

1)記事が客観的な事実なのか、あるいは記者個人の意見または推論・批評・期待なのか明確に読者に分からせる書き方をするよう心掛けねばならない。 事実に基づかない記事や裏付けを欠く記事は、いかに客観性を装っても露見するものであり、それは産経新聞社にとって読者の信頼を損ねる自殺的行為となる。見出しについても同様である。

2)写真もまた正確かつ公正さが求められる。捏造はコンピューターの発達によって容易になしうる。写真ジャーナリストの良心と良識は一段と重みを増していることを自覚しなければならず、意図的に画像を操作したときは、その旨を明記しなければならない。

3)産経新聞記者は情報源秘匿の約束をした場合は必ず守る。明確にオフレコの約束をした場合も同様である。これを厳守するためにも秘匿やオフレコの安易な約束は避けなければならない。

4)著作権は守らねばならず、盗作・剽窃は懲戒処分の対象となる。とくにネット上で多くの情報が容易に入手できる今日の状況は無自覚による盗用が行われやすいことに注意する必要がある。引用は公正を貫き、我田引水であってはならず、出典は明示しなければならない。

[独立と寛容]

産経新聞は国益を重んじ、公正でバランスのとれた報道をめざすが、世におもねらない主張を展開していくためには外国を含め、あらゆる勢力からの干渉を排し、独立した存在であるとの立場を堅持する。その一方で、産経新聞と論調を異にする意見であっても誠意と責任ある見解に対しては謙虚に耳を傾け、必要に応じて紙面を提供する寛容さを維持する。以下はこれに関して順守すべき留意点である。

1)公的機関の審議会や、あるいは外国を含む特定団体のメンバーを委嘱された場合、記者個人の判断を避け、必ず上司の許可を得るものとする。

2)政党やその関連団体、政治家個人などの機関紙誌上はもちろん他のメディアへの執筆や出演についても個人の判断で引き受けてはならず、上記同様の許可を得なければならない。産経新聞記者の立場で取材して得た情報は基本的に産経新聞社の報道目的以外に使ってはならないからである。

3)その他産経新聞の尊厳を汚したり、産経新聞記者が特定の勢力に従属しているかのような誤解を与える組織の構成メンバーになることは絶対に慎まなければならない。

[人権の尊重]

産経新聞記者は個人の名誉と人権を重んじ、プライバシーに配慮すべく、以下の点に万全の注意を払う。

1) 取材、報道、論評にあたっては人種、性別、宗教、国籍、職業などによって差別してはならない。

2)事件や事故の取材にあたっては発生した原因や動機、背景について科学的ないし合理的報道に重きを置くよう心掛けるべきである。被害者の家族などプライバシーにかかわる報道については公共の利益にかなうと判断できる場合において最小限にとどめる。

3)過去においてメディアが無実の人を犯罪者のように扱った苦い経験を教訓として、裁判で有罪が確定されるまでは慎重な上にも慎重な立場を堅持しなければならない。

4)特定個人について批判記事を書くにあたっては、誹謗中傷を避けることはいうまでもなく、あくまで事実に即し、感情に流されないよう抑制的な内容にとどめる配慮が必要である。

[品格と節度]

産経新聞が文化的公共財としていつでも、どこでも読める新聞をめざすには、当然のことながら品格と節度は欠かせない。それはまた産経新聞記者の誇りでもある。そのためには産経新聞社や自らを卑しめるような行動は許されない。

1)品格と節度を逸脱しないようにするためには記者一人一人が日ごろから記者倫理について思いを巡らし、自らを律していく自主的な姿勢が何よりも肝要である

2)「産経新聞社 記者指針」の精神は産経新聞社を退社した人々もこれを尊重し、後進の範としてよき伝統を連綿と継承していくことが求められる。

この「産経新聞社 記者指針」は平成12年6月に制定された日本新聞協会の「新聞倫理綱領」に基づき、またこの綱領を実りあるものとするためにつくられた同協会新聞倫理綱領検討小委員会委員長の「新聞記者行動規範」を踏まえて策定したものであることを付記する。