産経新聞社

イベント情報

 東京都写真美術館では、土田ヒロミの個展を開催いたします。
 1960年代終わりから写真家として本格的な活動を開始した土田は、日本の土俗的な文化、ヒロシマ、高度経済成長、バブル経済などのテーマを通して、変貌する日本の姿を撮り続けています。土田の視点はつねにユニークで、作品ごとに明確なコンセプトを持ち、日本という国に対する問題意識を実験的ともいえるアプローチで表現してきました。
 「自己表現」と「徹底的な記録」の両面を行き来することで進化を遂げてきたこの作家の作品からは、社会性と時代性を背後に日本が抱える問題を汲み取ることができます。
 この展覧会では東京都写真美術館が重点的にコレクションした土田作品に加え、最新作を含め氏の作家活動の軌跡を一堂に紹介します。混沌とした世相のなか、土田作品は日本と自己の関係を見直す何らかのヒントをくれることでしょう。

【展覧会出品作品】
 ■パートI 日本人
 「俗神」過去に繋がる私(1968−74)
 「砂を数える」高度成長都市化する私(1975−89)
 「パーティー」バブル経済踊る私(1980−90)
 「新・砂を数える」新世紀Fake 化する私(1995−2004)
 「続・俗神」日本のまつりを記号化(1980−2004)
 ■パートII ヒロシマ
 「ヒロシマ1945〜1979」(1976−79)
 「ヒロシマ・モニュメント」(1979−83)
 「ヒロシマ・コレクション」(1982−94)
 ■パートIII Daily セルフポートレイト
 Ageing −時間を巡る私−(1986 年7 月− )(ビデオ作品、インスタレーション)

【作品解説】
「俗神」−過去に繋がる私−(1968−1974)
1968年から1975年に、日本各地を撮影取材。1971年、フリーランスになる際、自分自身を検証するために、まず日本文化に対峙する必要性から生まれた作品である。日本の古い宗教的な空間や祭りの空間、富士山、伊勢神宮、吉野、青森など土俗的かつ時代をまたいで継承した文化、人々を捉えた。

「砂を数える」−高度成長都市化する私−(1975−1989)
 1975年から1985年までに日本各地で撮影された日本人の群集としての姿。「俗神」が一段落した1975年から、ほぼ10年間にわたって、首都圏を中心に撮りためたシリーズで、福井の山村を離れ、都市化していく自分自身の存在のありようを対象化する試みから進められた。「お祭り(初詣・花見を含む)」、「レジャー・行楽(遊園地・海水浴・博覧会など)」、「天皇行事」、「街頭・公園」、「学校儀式」、「戦争被災者慰霊」、「メーデー」、「スポーツ・ギャンブル」。日本人が、1980年代前後の時期、どのような機会に「群集」を成しているのか見て取ることができる。

「パーティー」−バブル経済踊る私−(1980−1990)
 1980年から90年まで、バブル経済に沸く日本の異常ともいえる一時期に、当時どこかしこで開かれていた「パーティー」。「パーティー」というハレの舞台に、華やかな衣装で身を包み、派手なメイクとヘアスタイルで夜な夜な出没する人々の姿を捉えている。「俗神」「砂を数える」に通ずる、日本の群れの姿・日本人の本質といったものがここにも表されている。

「新・砂を数える」−新世紀Fake 化する私−(1995−2004)
 「砂を数える」のカラーによる続編。日本のバブル経済が一挙に崩壊していく中、時代のバーチャル化様相を考察している。一つのベクトル方向に動かず、互いに距離を取って群れる姿から、以前の「群れ」の形が確実に変質してきていることを如実に捉えている。デジタル技術を採り入れ、予測不能の現代像を展開している。


「続・俗神」−日本のまつりを記号化−(1980−2004)
 「俗神」の続編として、お祭りそのものをカラーで制作。祭りの形を記号的に捉える。1981 年に浅草でおいらんを撮影したことがきっかけとなった。民俗学的な分類より、形のおもしろさに重点が置かれている。大判フィルムを使用して、スタジオ・ポートレイトのスタイルを戸外で実行。形はかわっても断絶せずに続いてきた日本人文化の厚み、日本人文化の多様性を伝える。

「ヒロシマ三部作」
 1973 年頃より関りはじめた3 部作によるシリーズ。ドキュメンタリストを自認する者として、フリーランサーになった71 年頃より、原爆の惨事を記録する仕事をすべきだという思いから広島へ模索の旅に出る。実際に方法論を決定し、撮りだしたのは1976 年。被爆体験記「原爆の子」(1951、岩波書店)に出会ってから、数年かけて30−40 代になった原爆の子の消息をたどり107 人に取材した「ヒロシマ1945〜1979」。さらに1979 年、原爆遺跡を記録した「ヒロシマ・モニュメント」。1980年に広島平和記念資料館の遺品、原爆資料の記録した「ヒロシマ・コレクション」へと続く。


「Aging」−時間を巡る私−(1986 年7 月〜)
 1986 年から毎日、自分の顔を記録として撮りはじめる。自分の老化に気づいたことが作品制作のきっかけとなった。老人社会や老化の問題を考えるとき、老人ホームの人たちを撮るありきたりのやり方ではなく、セルフポートレイトを定点観測的に撮影する方法を考え出し、現在まで続けられている。

 1939 年福井県生まれ。福井大学工学部卒業後、ポーラ化粧品本舗に入社する一方、東京総合写真専門学校で写真を学び、個展を開くなど、写真家としての活動を始める。退社後、写真家としての道を選んだ作家は、日本人の民族性を追及した『俗神』を発表した。「日本人としての自分自身の座標をもう少し確かめておきたかった」(「俗神」オットーズ・ブックス社より)というこのシリーズは、福井で育ち、次第に都会へと根付いていくであろう自己の確認、都市化が進むなかで失われていくアイデンティティの再確認がなされている。

 彼は、八百万の神が持つ人間的な特性に象徴されるような民族性を持つ日本人・民衆を「俗神」とし、その奔放な姿を捉えた。これらの作品には、日本の行動様式や生活意識が基づくところの精神的原体験を見出すことができる。その後、ニッポンをみつめるという意味では「俗神」と同じテーマでありながらも、その視点が原点と到達点という対局をなしている「砂を数える」を発表し、日本人の「群衆の人」的文化に焦点をあて、過密化した都市のなかへ順応していく民衆の姿を写し出している。

 また、伊奈信男賞を受賞したシリーズ「ヒロシマ」では、爆心地の被爆の痕跡を残す風景や、『原爆の子』(長田新編、岩波書店)に作文を寄せた被爆体験者の33年後のポートレイト、ヒロシマ平和記念資料館におさめられている遺品などを撮影し、当事者としてではなく、現代のなかで風化していく戦争意識を提起し高い評価を受けた。

 展覧会の主要作品を掲載した展覧会図録を刊行します。
 詳細は、当館ミュージアムショップ「ナディッフバイテン」(03−3280−3279)までお問い合せください。

 展覧会開催期間中の第2・4金曜日14時〜担当学芸員による展示解説を行います。

■第1回:1月18日(金)午後6時30分(開演6時15分)〜8時 倉石信乃×土田ヒロミ
 写真評論家の倉石氏をお迎えし、写真史をベースに土田作品を分析します。(終了)

■第2回:2月1日(金)午後6時30分(開演6時15分) 太田治子×土田ヒロミ
 美術に造詣の深い作家の太田氏を迎え、作品を見て感じたことや抱いた思いを土田氏にぶつけていただきます。

■第3回:2月8日(金)午後6時〜8時 ピーター・バラカン×土田ヒロミ
 70年代から日本在住で、異文化で活躍するバラカン氏に、、土田ヒロミの「ニッポン」と日本文化について掘り下げていただきます。

※各日とも、当日先着順。入場無料。(定員:30名様)

開催要項
主 催 東京都東京都写真美術館/産経新聞社
協 賛 日鉱金属株式会社/株式会社ニコン/ニコンカメラ販売株式会社/
エプソン販売株式会社/株式会社ポーラ/富士フイルムイメージング
後 援 サンケイスポーツ、夕刊フジ、フジサンケイビジネスアイ、iza!、SANKEI EXPRESS
会 場 東京都写真美術館3階展示室
開催期間 2007年12月15日(土)〜2008年2月20日(水)
開館時間 10:00〜18:00(木・金は20:00まで)
※ただし1/2〜1/4は11:00〜18:00
休館日毎週月曜日(祝日の場合は翌日の火曜日)、年末年始(12/29〜1/1)
料金 一般:500(400)円、学生:400(320)円
中高生・65歳以上:250(200)円
※( )は20名以上の団体料金
※小学生以下、都内在住在学の中学生、障害をお持ちの方とその介護者は無料
※第3水曜日は65歳以上は無料
※東京都写真美術館友の会会員は無料

 

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