
フランス革命の動乱期に、マリー・アントワネットとナポレオン妃ジョゼフィーヌに仕えた宮廷画家ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ(1759〜1840年)は、バラの花の魅力に取りつかれ、169枚の銅版画からなる大著『バラ図譜』(Les Roses)を完成させました。ボタニカル・アートの金字塔とされるこの作品で、ルドゥーテは植物学的正確さを踏まえ、芸術性も備えた「バラの肖像」を描き出すことに成功し、現代も多くの人々を魅了しつづけています。
本展は「バラのラファエロ」と称えられた巨匠ルドゥーテの生誕250年を翌年に控え開催されるもので、テーマをバラだけに絞り、日本で初めて大判のフォリオ版『バラ図譜』の全169作品を一堂に展示公開します。
さらにバラの研究家、エレン・ウィルモット(1858〜1934年)の著作『バラ属』(The Genus Rosa)に収められたアルフレッド・パーソンズのリトグラフ、日本のボタニカル・アートの草分け的存在である二口善雄(1900〜1997年)の水彩画のほか、現代の人気写真家、齋門富士男がバラに魅せられて撮った最新作もあわせて展示、18世紀から現代まで、バラに魅せられた人々の作品を紹介いたします。
また、会場では、ルドゥーテが唯一表現できなかった薔薇の「香り」の演出も加え、本物のバラ園とはまた別の魅力を持つ華麗なる「薔薇空間」を出現させます。

1.ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ
『バラ図譜』(Les Roses)フォリオ版 全169図版
多色刷点刻銅版画図版(手彩色補助) 1817〜1824年制作
ルドゥーテの描くバラは、ボタニカル・アートとしての忠実な描写を出発点としながら、バラの肖像画とも言うべき境地に達しています。たとえば花首の微妙な傾け方により、その表情は変わります。花びらの開き方一つで、幼い少女に見えたり、貴族の奥方にも見えます。
ルドゥーテはルイ16世王妃マリー・アントワネットの博物蒐集室付素描画家に任命された人物で、革命後はナポレオン皇妃ジョゼフィーヌから寵愛をうけ宮廷画家として活躍しました。皇妃は無類のバラ好きで、大金をはたいて多くのめずらしい品種を集めていたことから、ルドゥーテはそのカタログともいうべき『バラ図譜』の制作を提案しました。しかし、ジョゼフィーヌはその完成を見ずして他界してしまい、ルドゥーテは自ら費用を工面し、8年の歳月をかけてそれを完成させるとともに、この仕事を通じてバラの魅力のすべてを把握するようになったのです。この図譜に収められた169種のなかには、すでに現存せず、この図譜のみにその姿を残しているものも多くあります。よって、図譜は美術的価値だけではなく、植物学上も重要な資料となっています。
『バラ図譜』は「本」なので、通常は一点ずつしか見ることができませんが、本展ではすべてを額装して一堂に展示します。そこに出現するのは図像によるバラの花園で、訪れる者の溜め息とバラたちの囁き声が聞こえてきそうな「薔薇空間」。本物のバラ園以上に、バラの「気」に満たされます。
2.アルフレッド・ウィリアム・パーソンズ
バラ研究家エレン・ウィルモット著作『バラ属』(The Genus Rosa)に収められた図版
多色刷石版画 40点 1910〜1912年制作
イギリスの風景画家で、明治時代に来日しているアルフレッド・ウィリアム・パーソンズ(1847〜1920)が、バラの研究家、栽培家として知られていたエレン・ウィルモット(1858〜1934)の依頼により制作した、植物図譜『バラ属』の図版を紹介します。
3.二口善雄『ばら花譜』(1983年・平凡社刊)のための原画 水彩 約30点
日本のボタニカル・アートの草分け的存在である二口善雄(1900−1997)が晩年に力を注いだバラの水彩画を紹介しながら、ルドゥーテの作品のもつ意味を検証します。
4.齋門富士男 撮影 バラの最新作の写真 約50点
現代の人気写真家、齋門富士男がバラに魅せられて撮った最新作を展示、ルドゥーテへのオマージュを捧げます。

ピエール=ジョゼフ・ルドゥーテ(1759〜1840)
植物画家として最も名声を得た人物のひとり。ルドゥーテの生きた時代は、まさに博物学の黄金時代でもあった。そんな中で「花のラファエロ」とまで称えられたこのボタニカル・アートの天才画家は、手の込んだ技法で多くの植物画を残し、現在に至ってもその作品の価値は色褪せていない。
ルドゥーテは、現在のベルギー領サンチュベールに生まれ、10代後半からパリにある兄の工房で装飾画家を務め、パリの王立植物園博物館で絵画技師として働くようになる。その後、ルイ16世王妃マリー・アントワネットに植物画を教えるなどの活躍をし、宮廷の蒐集室付素描画家の称号の名誉を得る。生涯に4,000枚以上の植物画を描いた彼の作品には、ほぼ同時代に生きたモーツァルトの音楽と同じく、軽やかで華やかな旋律の中に、美しいもののみを信じて生きた人の、透明な視線が感じられる。
アルフレッド・ウィリアム・パーソンズ(1847〜1920)
イギリスの風景画家のアルフレッド・ウィリアム・パーソンズは、バラの研究家、栽培家として知られていたエレン・ウィルモット(1858〜1934)の依頼により、植物図譜『バラ属』(The Genus Rosa)の図版を制作した。彼が描いた図版の素晴らしさ、その植物学的な重要性については、辛口批評で有名なウィルフリッド・ブラントが『植物図譜の歴史』の中で以下のように述べていることからも明らかである。「(ルドゥーテの)『バラ図譜』の中の最良の図版は美術作品として傑出しているかもしれないが、植物学者はアルフレッド・ウィリアム・パーソンズがウィルモット著『バラ属』に描いた絵の方により満足する。」
この著書『バラ属』は、ルドゥーテの『バラ図譜』に次ぐ、バラの図鑑として大変高名なものとなっている。
二口善雄(ふたくち よしお)(1900〜1997)
金沢市生まれ。東京美術学校洋画科を卒業。昭和2年より東京帝国大学理学部植物学教室に勤務。植物学者らの指導の下、植物画を描き始めた。昭和19年からは文部省の理科図集の制作に携わり、亡くなる直前まで精力的に作家活動を続けた。原画を描いた図譜としては『日本椿集』(平凡社刊)、『椿』(八坂書房刊)などがある。
美術学校卒業後に植物学者の指導を受けたため、彼の植物画は非常に科学的かつ正確に描かれている。そして晩年は、『ばら花譜』(平凡社刊)の出版をきっかけにバラの美しさに魅せられ、多くのバラの絵を描く。千葉県立中央博物館は、生前に二口より約3,000点におよぶ原画の寄贈を受け今日に至っている。
齋門富士男(さいもん ふじお)(1960〜)
東京で活動しながら、断続的にヨーロッパ、アメリカ、インド、ネパールなどを旅する。旅の中で写真を学び、独自の表現を模索。1993年から1997年の間、中国の農村に行き続けたことで、ポートレイト写真に出会う。中国の人々のポートレイトは、『CHINESE LIVE』(パルコ出版)、『STAR KIDS』『上海人』(光琳社)と出版され、パルコミュージアムで写真展を実施。
また多くの媒体で各界の著名人を撮影して発表する。2001年、新潮社で出版された『トーキョー・カーニバル』その他の写真活動で講談社文化賞写真賞受賞。2004年にはドイツで『Reportage photography of year 2003』で上海を撮影した写真がドキュメンタリー賞にノミネートされる。これまで、展覧会は16回、作品集の出版は20册。その他、フジフィルム写真コンテスト審査委員長や大学、専門学校などで特別講師などの経験も。本展への写真出品を記念して、『Rose Garden』(朝日新聞出版)を4月に発売予定。
| 開催要項 | |
| 会 期 | 2008年5月17日(土)〜6月15日(日) 会期中無休 |
| 開館時間 | 10:00〜19:00 毎週金・土曜日は21:00まで(入館は各閉館の30分前まで) |
| 会 場 |
Bunkamuraザ・ミュージアム http://www.bunkamura.co.jp/museum/index.html 〒150-8507 東京都渋谷区道玄坂2−24−1 Bunkamura B1F |
| 主 催 | Bunkamura、産経新聞社 |
| 後 援 |
サンケイスポーツ、夕刊フジ、フジサンケイビジネスアイ、iza! SANKEI EXPRESS、サンケイリビング新聞社 |
| 協 力 | NPOバラ文化研究所、キャドセンター、キューフロント、アトリエ染花 |
| 企画協力 | コノサーズ・コレクション東京、テモアン |
| 監 修 |
宮澤政男(Bunkamuraザ・ミュージアム キュレーター) 野村和子(NPOバラ文化研究所 副理事長、主任研究員) |
| 入館料 |
一般:1,300円(当日) 1,200円(前売・団体) 大学・高校生:900円(当日) 800円(前売・団体) 中学・小学生:600円(当日) 500円(前売・団体) (すべて消費税込) ※団体は20名様以上。電話でのご予約をお願いします。 (申込み先:Bunkamuraザ・ミュージアム tel 03-3477-9413) ※学生券をお求めの際は、学生証のご掲示をお願いいたします。(小学生は除く) ※障害者手帳のご掲示で割引料金あり。詳細は窓口でお尋ねください。 |
| お問い合わせ | Bunkamuraザ・ミュージアム 03-3477-9413 |